日記
メタデータを付与することの意味 (13:49)Edit

>リソースを公開する人が、それにメタデータを付与する努力をする必要がある。しかしその努力の見返りに、その人はどんな利益を受けられるのだろうか。この質問に答えられなければ、メタデータをつけようとする人がいないことは自明である。

俺個人が思い描くところの、Webサイトにメタデータを付与することによって何が起きうるか、各サイト運営者にどのようなメリットがあるのか、を語ってみる。

Web上に公開されているリソースというのは、それ単独で意味があるコンテンツであると同時に、WWWという巨大なコンテンツの中の部分でもある。たとえば、個人ニュースサイトなどが作成した「ある話題の関連リンク集」によって、さまざまなサイトに分散された情報が編集され、別のコンテンツ(リンク集)の一部としての意味合いを持つ、というような事例が挙げられる。

Web上(あるいはインターネット上)に公開されたリソースは、すべて「ハイパーテキストによって接続される」=「他のコンテンツの一部として編集される」可能性を持っている。そして、その可能性は個人が個人としてコンテンツを作成しているときには思いも寄らなかった、新しい可能性を見いだしうる。あるコンテンツとあるコンテンツを接続することによって、新しい別の意味(コンテンツ)がそこから生まれたり。

現在のメタデータをほとんど持たないWeb上のコンテンツでも、人間が人力でその意味を解釈して再編集すれば、新しい意味を付与したコンテンツを生成することが出来る(関連リンク集の例のように)。しかし、人力で意味を解釈して再編集をするという作業には、マンパワー的な限界がつきまとう。そのマンパワー的な限界を突破する道具がメタデータの付与だ。

もちろん、メタデータによってマンパワー的な作業量が減じたからといって、人力がすべて必要なくなるわけではない。編集の結果として新しく意味があるコンテンツを作成できるかどうかは、あくまでも人力にかかっている。ただし、そこにおける単純労働的な要素を限りなく自動化することは可能だろう。

メタデータの付与が一般化したときに、最初にその恩恵を受けるのはいわゆる検索エンジンシステムだ。現在のキーワード一致検索などと比べると、圧倒的に高度な検索システムが実現されるだろう。単なるキーワード一致検索では、そのキーワードがそのコンテンツにおいてどのような意味を持つかまでは(コンピュータが)認識できなかったが、メタデータによってキーワードの意味が取得できるようになると、キーワードの各コンテンツにおける意味(重要度、使われ方)までを加味した検索処理が可能になる。

また、Amazonのようなネット書店の例で言うと、メタデータ(を取得するためのインターフェース)を提供することによって、自分のサイトよりも安価なサイトに客を取られうるというネガティブな可能性ももちろんあるのだが、それよりもAmazon自身が用意できる販売サイト(コンテンツ)以外にも、いろいろなユーザー(および同業他社)によって新しく魅力があるコンテンツ(販売サイト)が登場しうる可能性がある。

実際Amazon Webサービスを利用し、独自のコンテンツ(インターフェース)によって書籍の販売を行っているサイトも存在する。それがAmazonにどれだけの利益を生み出しているかは知らないけれど、ukでも同様のサービスを開始した(Amazon、Web サービスプログラムをイギリスでも実施参照)と言うことは、少なくともAmazonは今まで実際に運営してきた結果として、そういうサービスを今後も運営し続ける価値があると認識しているのだろう。

Web上のコンテンツにメタデータを付与するということは、自らが作成したコンテンツがその単独としての意味を持つだけではなく、WWWの一部として新しい意味を持ちうる可能性を、積極的に肯定することだ。

そのようなポリシーを誰もが是とするわけではない(自分のコンテンツには、自分以外からはリンクすらされたくない、という人もいるわけだし)ことは承知しているが、WWWという仕組みを積極的に活用しようと考えたときに、このような思想に至るのは私にはごく自然なことのように思われる。

とここまで書いてきた感想としては、メタデータを付与することによって個人Webサイト運営者が受ける直接的なメリットというのはほとんどない。ただし、「個人Webサイト運営者」=「WWWのディープな利用者」であると考えると、「メタデータの付与によって、巡り巡ってWWWの仕組み自体が便利になる」という「風が吹けば桶屋が儲かる」程度のマクロなメリットはあるだろう。即物的な利益を求める人には向いていない思想かも。

Published At2003-04-13 00:00Updated At2003-04-13 00:00