日記
、 (02:26)Edit

池波正太郎って読んだことがほとんどないんだよな。たぶん昔実家かじーさん家(ち)に置いてあった本を何冊かは読んだことがあると思うんだけど、昔(小学生くらいの頃)は時代小説にあまり興味がなかったんで、誰が書いた本かを意識していなかった。時代小説ってものも試しに読んでみるか、程度の意識で読んだ程度だ。

その後時代小説も読むようになったんだけど、司馬遼太郎から入って、宮城谷昌光、隆慶一郎、海音寺潮五郎、南条範夫あたりと、特定の作家だけに特化していて、たまたま池波正太郎には手を出す機会がないまま過ごしていた。

手を出さなかった理由を自己分析すると、「池波正太郎はあまりにもたくさん本が出すぎていてどの辺から手をつければいいのかよくわからなかった」「テレビ時代劇化されている作品が多いんで何となくレベルが低そうに思えていた」といったあたりだろう。しかし、時々池波正太郎を絶賛する文章を見かけることもあり、後者の理由はおそらく思いこみにすぎないんだろうなーということもうすうす気づいていた。

で、ようやくきちんと池波正太郎を読んでみる気になった第1弾が、この剣客商売シリーズだ。読んでみて、いわゆる「テレビ時代劇」的な印象は誤りだったことがすぐにわかった。ああいうワンパターンの話は一つもない。だいたいあの田沼意次を地味に魅力のある政治家として描きつつも、それが舞台装置の一つにすぎないというのだから、いわゆるテレビ時代劇のような単純な話になるはずがない。

かつては名のある剣客だったが、すでに引退してからもうずいぶん経つひょうひょうとした老人。父に作ってもらった道場で一人の門下生もいないままに日々を淡々と過ごすその息子。田沼意次の妾腹の子で、名のある道場で四天王の一人と数え上げられるほどの腕前を持つ男装の美女。という三人を中心に、彼らが出会う人々と事件を描いていく。

事件を描く話は比較的パターンものっぽい部分もあるが、人物を描くストーリーは非常に味があるものばかりだ。特に老人剣客の酸いも甘いも一般人の3倍くらい噛み分けてきたようなキャラクターが、とてもいい。ひとまず2巻まで読んだ段階ではほとんど活躍していない息子も、おそらく今後だんだんと活躍してくるんだろうし、そうなるとその精神の成長物語の方も面白くなってきそうだ。

池波正太郎はエッセイの評判もいいみたいだし、そっちも今度読んでみよう。

Published At2004-09-08 00:00Updated At2004-09-08 00:00